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BSNラジオ「ふるさと散歩」
日食直前の会場のようす
■ツングスカ大爆発の内容は「にいがた星紀行」にも掲載されています。
0017・「上海皆既日食の顛末」

 22日の日食は皆さんご覧になられたでしょうか?県内でも見られたところ、見られなかったところがあったようですが、今回は、部分日蝕が見られただけでもとても幸運だったと思った方が良さそうです。
 私は、有志35人とともに中国の上海郊外で皆既日食の観測を行いました。観測地は市街地から西に50キロほど行ったところの「しゃざん天文台」の近くにある「月湖(つきこ)公園」というところです。ここには外国から上海入りした約5000人もの人たちが集められました。
 しかし、無情にも当日の朝は分厚い曇り空が私たちを迎えました
 太陽がかけ始めるのは8時23分、雲は依然として分厚いままではありますが、時折雲を通してかけてゆく太陽が確認できました。おそらく公園内にいるほとんどの人が皆既日食の成功を信じていたことでしょう。
 まもなく周りの様子が暗くなるのがわかりました。何人かはそれが日食の進行によって暗くなったのだと感じたようです。しかし、時間が早すぎます。薄暗くなった雲からぽつりぽつりと雨が降り始めました。その強さは瞬く間に大粒の雨へと変わり、強さはひどくなってゆきました。一斉に望遠鏡やカメラにビニール袋がかけられました。もう皆既日食までは30分を切っています
 「この雨が止めば、からっとした青空が広がるかもしれない・・・」このかすかな希望は直後に打ち砕かれました。雷鳴がとどろき出し、私たちは近くの休憩所に緊急避難せざるを得なくなりました。全身が雨でびしょぬれになり、カメラを向けることすらできない状況で、外の景色がすーっと暗くなりました。皆既日食の始まりです。私たちの頭上を、直径270キロの月の影が今被ったのです。周りは完全に夜のようになりました。
 時折光る稲妻と雷鳴の轟き、滝のような雨の音、誰がこのような経過を予測できたでしょう。およそ5分の後に周りは再び昼の明るさを取り戻しまし、雷雨もいずこかに去ってゆきました。
 過去13回の皆既日食を経験している私にとって、今回は前例のない厳しいものとなりました。大自然の営みを、私たちは謙虚に受け入れるしかありません。そんなことを強く感じさせた皆既日食でした。
                            
沼澤茂美


皆既日食中・雷雨のため建物の中に避難中


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