● 第20回----8月18日
「佐渡によこたふ天の川」
「荒海や佐渡によこたふ天の川」この有名な句を知らない人はいないでしょう。この句は1689年、今から320年前の今日、松尾芭蕉が出雲崎で詠んだものです。
しかしこの句に関しては様々な謎が提起されてきました。
この句を詠んだ頃は夏真っ盛りであるのに、なぜ荒海か。荒海の季語は冬ではないかという意見。また、天の川は佐渡に横たわることはないと言う意見。特に後者は、天文学者や理系の科学者によって独自の調査、解釈が行われ、著作や投稿文も少なくありません。彼らは一様に「天の川は佐渡に横たわることはない」とし、この句は芭蕉の心眼によって作られたものだと結論づけています。様々な分野の人たちがこの謎解きに挑戦しました。しかし、その答えは意外なところで見つかりました。それは、芭蕉が旅の中で書きつづっていたとされる紀行文にありました。
それによると、「北陸道を旅して、越後ノ国の出雲崎という所に泊る。彼方の佐渡がしまは、海の面十八里、蒼波を隔てて東西三十
五里に見える。〜(中略)〜窓を押し開けて、しばし今までの旅のことを考えていると、日は既に海に沈んで、月はほの暗く輝き、天の川が頭上にかかって星がきらきらと冴わたって見えた。沖の方から運ばれる波の音は、たましいをけづるかのようにで、訳もなく悲しみがこみ上げてきてなかなか眠れない・・・。」
あら海や佐渡に横たふあまの川
「日既に海に沈んで・・・」から始まる後半の部分は、その時の具体的な情景を伝えています。 私は、すぐにコンピューターを使って、1689年8月18日の宵の頃を再現してみました。内心は銀河の序に合致することを祈っていたのは言うまでもありません。
午後8時前の空、薄暮の明るさも消えかけた空の西の地平線上には沈みかけた三日月があり、天の川はほぼ頭上近くに位置し・・。まさに、銀河の序の光景がそこにあったのです。
出雲崎の丘の上から見た日本海と佐渡 |