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BSNラジオ「ふるさと散歩」
旧山北町大毎付近のハサ木と、真北の空
近著のご紹介
● 第50回---03月16日

「春先のハサ木と星空」

 少しずつ晴れる日が多くなってきた気がします。今日は、新潟ならではの景色をお伝えしようと思います。
ハサギ(はさ木)というと、秋の風物詩に違いありません。
 ハサ木は刈り取った稲を天日で乾燥させるために植えられた樹木を指しますが、各地に各様の様式があり、呼び名も「ハサ」「ハザ木」などさまざまです。私の住む新潟県の北部ではハサと呼んでいて、樹木を植えて利用するのではなく、竹や杉の木を切ったものを保管しておき、稲の刈り入れ時期に田圃の傍に組み上げて使用していました。
 農業の機械化でハサ木は絶滅寸前に追いやられてしまいましたが、所々にいまだに残るものを見かけることがあります。信濃川と阿賀野川が作り出した広大な蒲原平野の中に夏井という地区がありますが、ここには約600のハサ木が住民の方々の協力により保存されていて、風景写真ファンをはじめとして多くの人達が訪れることで知られています。
 そして、夜の夏井はもっと魅力的です。ハサ木と星の共演は四季折々の特徴ある表情を作り出してくれるのです。北の方向に新潟市街が近いため、空全体は暗いとは言えませんが、弥彦山のシルエットや街灯、道を行き交う車のライトも時には効果的な演出をしてくれるものです。
実はこの時期には、明け方に東の空に夏の天の川が昇ってきます。夏の天の川は夏の頃には宵の空に輝きますが、実は春先から6月いっぱい頃の方がきれいに見えるのです。
夜半を過ぎると町の明かりがだいぶ消えて星空の暗さが改善され、大気も落ち着いて透明度が増すのが原因です。そんなときははっきりとした天の川の容姿に驚かされます。
 ハサギの風景は、他にも旧村松町、山北町など県内の山間部に残っており、常緑樹でなければ春先はまだ葉が付いていないので、樹木の複雑なシルエットと星空の競演を楽しむことができます。
何度通っても毎回異なる表情を見せ、一期一会の感動を与えてくれます。

沼澤茂美

月夜の夏井のハサ木。正面は弥彦山

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